日本国内においては、シロシビンおよびそれを含むキノコは「麻薬及び向精神薬取締法」に基づき 規制薬物(麻薬)に指定されており、所持・使用・譲渡・栽培などが厳しく禁止されています。
本サイトは、サイケデリックや精神活性物質に関する最新の研究、国際的な医療動向、歴史的背景などの情報を、 教育・啓発・学術的な目的で提供しており、日本国内での使用や違法行為を推奨・助長する意図は一切ありません。
また、本サイトの内容は医療的助言を目的としたものではありません。ご自身の健康に関する判断は、 必ず医療専門家にご相談ください。
近年、「マジックマッシュルーム」に含まれる成分・シロシビンが、うつ病やPTSDだけでなくアルコール依存症にも有効かもしれないとして注目を集めています。
そんな中、**アメリカの名門医学誌『JAMA Psychiatry』**で、シロシビンを用いた大規模臨床試験の結果が2022年に発表されました。
今回はその内容を、専門用語をできるだけやさしくまとめてご紹介します。
🍷アルコール依存症は「身近な病気」
日本では約80〜100万人がアルコール依存症とされ、予備軍を含めると数百万人にのぼるといわれています。
世界では約4億人がアルコール使用障害(AUD)を抱え、毎年100万人以上が飲酒関連の原因で命を落としています。
「合法だから安全」と思われがちなアルコールですが、実際は依存性が高く、脳・肝臓・心の健康にも深刻な影響を与える物質です。
日常のストレス解消や人付き合いの一部として習慣化しやすい分、問題が見えにくい“合法ドラッグ”でもあります。
🧠研究の概要
ニューヨーク大学グロスマン・メディカルスクールの研究チームは、アルコール依存に苦しむ成人93名を対象に、
シロシビンまたは**プラセボ(偽薬)**を用いた2回の治療を行い、同時に心理療法(動機づけ面接や認知行動療法)を併用しました。
被験者たちは、治療前は飲酒量・飲酒日数ともに多く、日常生活や健康に深刻な影響を受けていたといいます。
🍷結果:飲酒量が大幅に減少!
治療後32週間(約8か月)にわたる追跡の結果——
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シロシビン群では重度の飲酒日が約60%減少
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完全に断酒できた人の割合は、プラセボ群の約2倍に
つまり、シロシビンを取り入れた人たちは、飲酒を大きく減らし、断酒を継続できる可能性が高かったという結果です。
副作用として一時的な頭痛・不安・吐き気が見られましたが、重篤な有害事象(自殺念慮など)は確認されず、
幻覚が続くような後遺症(HPPD)も報告されませんでした。

この図の右のグラフは、**シロシビンを使ったグループ(青線)**が、
治療後にどれほど飲酒を減らせたかを示しています。
偽薬グループ(灰線)に比べて、飲みすぎてしまう日が大幅に減り、
その効果が約8か月間安定して続いたことがわかります。
💬研究チームのコメント
「シロシビンを心理療法と組み合わせることで、従来の治療法よりも明確に飲酒行動を減らすことができた。」
また、研究者たちは「シロシビンは精神作用をもつため、必ず専門家のサポートと安全な環境が必要である」とも強調しています。
今後は、より長期的な追跡や多様な人種・年齢層での検証が期待されています。
🔍なぜ効果があるのか?
シロシビンは脳内のセロトニン2A受容体に作用し、思考や感情のネットワークを一時的に“リセット”するような働きを持つとされています。
その結果——
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自己認識が深まる
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感情の抑圧が解放される
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「なぜ飲んでしまうのか」を理解できる
といった内面的な変化が起こり、依存行動を手放しやすくなる可能性があります。
✨まとめ:希望の光になる可能性
この研究は、アルコール依存症の治療に新しい選択肢が生まれるかもしれないという希望を示しました。
ただし、研究チームも繰り返し伝えています。
「自己判断でシロシビンを使用するのは非常に危険。
必ず専門家のもとで、安全な環境で行うことが大切です。」
📚参考文献
Bogenschutz MP, et al. Percentage of Heavy Drinking Days Following Psilocybin-Assisted Psychotherapy vs Placebo in the Treatment of Alcohol Use Disorder: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Psychiatry. 2022;79(10):953–962.
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2795625
🌿うちなる一言
アルコールは、身近に手に入るからこそ見落とされやすい“依存性のある物質”。
その陰で、心や身体が静かにSOSを出している人も少なくありません。
依存症から抜け出すのは簡単ではないけれど、
サイケデリックス療法が希望の道を照らし始めている時代が、いま確かに来ています。
これからの精神医療や依存症治療の未来に、
シロシビンがどんな光をもたらすのか——静かに見守っていきたいですね。











